海の心
たにい
それは哀しいまでに純情である
風の気まぐれに従って 時にはさざ波を渚に寄せていたかと思うと 風向きが変わると激烈な波浪を打ちつけたりもする
しかし その深みは静寂に満ちていて 何があっても動揺しない
熱くなることも冷え切ることなく穏やかな温度を保っている
実は彼女は遥か沖合で一人静かに坐禅を組んでいるのだ
その深い瞑想の中で 表層水と深層水は入り混じり人格の一貫性を保っているのだった
母の自覚を取り戻して 彼女は潮騒の声で子守唄を歌ってくれる
生きとし生きるものが幸せでありますように と