マッチ売りの少女(ダイナマイトの少女)
猫道


火がつかねえな 湿ってるのかな

こすれねえな 噛み合ってねえな

あったまんねえな 明るくなんねえな

このまま凍えるのかな


火がつかねえな 湿ってるのかな

こすれねえな 噛み合ってねえな

あったまんねえな 明るくなんねえな

このまま凍えるのかな



三鷹市北野

契約を取れずに訪れる新聞奨学生の夕方

横浜中華街

同伴中の女子大生の視界の隅に映るカップル

忍野村青木ヶ原

古びた革靴の隣に鬼殺しのパック

渋谷区道玄坂

高級マンションでクリスマスに独り 眠って 起きない



そんなあなたとマッチ売りの少女が

泣きながら手をつないで走る

足をたすきで縛って二人三脚で

誰に渡すとも知れないバトンを持って

校庭のトラックを何周も走らされている

校庭のトラックを何周も走らされている

校庭のトラックを何周も走らされている



90年代の残りかすは玉出スーパーで1円で売ってる

サンタクロースはレイプ魔

4歳サバ読んでた三井ゆりは今もう43歳

東京もチェルノブイリも同じくらい住みにくい

とかなんとか洒落の利いたようなこと言って

憂さはらしたような気分になるのはやめろ

マッチ売りの少女

なんて美談じゃなく ただのアホだ

レディコミ作家が二足三文で描くドMストーリー

なんて絶対に子どもに読んで聞かせるもんか



「マッチはいりませんか?」

「要りません。」



ここであなたは持っているバトンに導火線がついていることに気がつく

火がつく 燃える いつのまにか

火花がバトンに引火する前にゴールしたいけど

どこにゴールすればいいか わかんない

爆発したらどうなるかも わかんない

それをどう片付けたらいいかも わかんない

だから無我夢中になりながらも走る



マッチ売りの少女を 引き摺ってく

マッチ売りの少女を 背中におぶってく

マッチ売りの少女を どついて置いて行く



導火線の火花はもうバトンに着火しようとしている

バトンを誰かに渡す人

抱きしめる人

放り投げる人

踊り始める人



そんなあなたはダイナマイトの少女

泣こうが喚こうが火がついてるダイナマイトの少女

自分でつけた火がついてるダイナマイトの少女



火がついたその先は今喋ってる俺にもわかんねえよ

ドカーン!

ヒルズも七面鳥も 根こそぎ吹き飛ばす未来

ドカーン!

トンネルが開けて 新しい友達に出会う未来

ドカーン! ご覧ください冬の夜空に!

ダイナマイトの少女が飛んでいく!



皆口々に言います

「ダイナマイトの少女は本当によくやった」

「ダイナマイトの少女はあんなことやめときゃいいのに」

「ダイナマイトの少女のやってることマジ意味わかんねえ」

「ダイナマイトの少女に共感しました」



でもいいじゃん 言わせとけば

マッチ売りの少女には「かわいそうに」しかコメントがつかねえ

マッチ売りの少女には「かわいそうに」しかコメントがつかねえ

マッチ売りの少女には「かわいそうに」しかコメントがつかねえんだ



ドカーン! ご覧ください冬の夜空に!

ダイナマイトの少女が飛んでいく!飛んでけよ!

飛んでけよ!

飛んでけよー!!!


自由詩 マッチ売りの少女(ダイナマイトの少女) Copyright 猫道 2011-12-24 01:03:41
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