賀春
ヨルノテガム







 さかなウオは宙空を飛翔し、
 そのウロコの窓から少女は
 口をあけて地球を眺め望みます
 ひとまわり大きくなるころに
 少女の瞳は星のネオンの棲み家となって
 着陸するのです


 *


 みかんを食べた
 ゆっくり噛んだ
 冷たくて柔かく
 もう無くなった
 みかんを食べた
 半分を食べた
 もう半分も食べた
 皮は実を忘れ ひらいた


 *


 うさぎが冬です
 寄り道した先が真っ白
 鳴き声は雪です
 誰も来ない道明かり
 月の住人の噂は
 しんしんと長い耳に
 積もりゆきます


 *


 鉛筆の空が流れます
 無口の泉へ辿り着きます
 筆談で自身を崖へ呼び出し、
 まずは落下です
 落ちた所の貝殻へ嘘を
 覚え込ませます
 言葉の森林で首を縊ると
 フクロウの鳴き声が耳から
 離れませんでしたか?
 三日月と絵の話で盛り上がります


 *


 冬の嵐が酒を飲み
 いびきをかいて寝ゲロで
 しょんべん温泉です
 仲間の吹雪は暖炉へ
 薪をくべ、そのままうたた寝
 前髪を程よく燃やします
 みかんの付いた しめ飾りが
 コタツでずっと眠りっぱなし


















自由詩 賀春 Copyright ヨルノテガム 2011-12-23 06:23:02
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