賀春
ヨルノテガム
さかなウオは宙空を飛翔し、
そのウロコの窓から少女は
口をあけて地球を眺め望みます
ひとまわり大きくなるころに
少女の瞳は星のネオンの棲み家となって
着陸するのです
*
みかんを食べた
ゆっくり噛んだ
冷たくて柔かく
もう無くなった
みかんを食べた
半分を食べた
もう半分も食べた
皮は実を忘れ ひらいた
*
うさぎが冬です
寄り道した先が真っ白
鳴き声は雪です
誰も来ない道明かり
月の住人の噂は
しんしんと長い耳に
積もりゆきます
*
鉛筆の空が流れます
無口の泉へ辿り着きます
筆談で自身を崖へ呼び出し、
まずは落下です
落ちた所の貝殻へ嘘を
覚え込ませます
言葉の森林で首を縊ると
フクロウの鳴き声が耳から
離れませんでしたか?
三日月と絵の話で盛り上がります
*
冬の嵐が酒を飲み
いびきをかいて寝ゲロで
しょんべん温泉です
仲間の吹雪は暖炉へ
薪をくべ、そのままうたた寝
前髪を程よく燃やします
みかんの付いた しめ飾りが
コタツでずっと眠りっぱなし