しょっぱい宝石
そらの珊瑚

私は
鏡の中で火傷の痕を
そっと
指先で確かめる
年月を経て
それは大分薄くなって
セピアに変色した
フォトグラフを連想させる
右頬に
てん、てん、てんと
程よい距離を置いて存在する
あたかもあの夏
恋の炎に
じりじりと焼かれた
かつての

のように

ここは
大昔
海だったのよねえ
標高五千メートルのアタカマ高地の
そこかしこに
岩塩が散らばって

しょっぱい宝石は
海の音を懐かしがって
ほほえむかしら
泣くかしら
いいえ
ここは雨が降らない砂漠よ
この結晶は
吹きさらしの風と
戯れるだけ
そうして
核は
ますます塩辛くなっていくの

火傷の痕が
愛した記憶を
イトオシムように
Bring me there


自由詩 しょっぱい宝石 Copyright そらの珊瑚 2011-12-21 09:48:15
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