うわ言のミッド・ナイト
ホロウ・シカエルボク





落下の形態が腑に落ちず
目下動転のとある夜だ
路地裏のとうに枯れた朝顔の鉢の
蔓の為の竹が歯の癖の様に泣く夜だ


眠る前から目覚まし時計が気になるのは
眠る前から目覚まし時計が気になるのは
きっとうまく眠れないだろう今夜を
確かに予感しているせいだ
いっそ眠らないでいてやろうか
てんで使いものにならなくなれば
誰も俺のことをあてにしないだろう


風呂場の蛇口の締りが悪くて
だらしない水滴が愚痴の様に落ちる
かからない催眠術のような音は
薄いカーテンのあたりで独り言のように消える
指のひび割れにつけた薬が沁みて
「欠陥はもっともシンプルな表現なんだ」
なんて
馬鹿


二〇年前
街中に溢れた音楽を聴いている
ポップ・ソングは
意外と世代と心中したりしない
世代がそれを忘れてゆくだけで


寝床は疲労を肥やしに描く
未来の様に冷え切っている
しばらく腰を下ろして
溶かしてしまわなければならない
見たい夢などあるわけじゃないけれど
欲しい朝日が迎えられるわけじゃないけれど


睡魔に取り巻かれて上手い言葉を思いつかない
窓の外を最後の路面電車が通り過ぎてから
白けた深夜は約束されている
賑やかな酔っ払いと
けたたましいマフラーのバイク


潜る前にもう一度
指に薬を塗っておかなければ
なんのために治すのだろう
関節に出来たシンプルな表現
悪い魚みたいな赤の色味
名前も知らないギタリストのソロ
今日のおやすみのあいさつは


ババ抜きの
誘いカードのずらしかたみたいで




自由詩 うわ言のミッド・ナイト Copyright ホロウ・シカエルボク 2011-12-20 23:00:50
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