春を待つひと
恋月 ぴの
誰もが幸せであることを望み
それに見合うだけの不幸せを我が身に背負う
故に生きることは辛く
苦しい
※
ふと目覚めれば凜として未明の寒さ厳しく
曖昧では済まされないこと知りつつも
北風に弧を描く白い首
羽を繕う渡り鳥へ思いを託す
※
明日は訪れる
等しく誰のもとへも
不確かな手触りのままで
それでも伝わってくるのは
生きる限り日々歩まざるを得ないこと
いつまでも岸辺に佇むことは許され得ないこと
吐く息は白い
物憂げな溜息か
生きる故の喘ぎなのか
渡り鳥は鳴いた
曇天の
岸辺に張った薄氷の
※
春になれば
その思いで一心と
頭上に振りかざした鍬を振るう
まるい背中は力強くも
「今しばらくは生きながらえていたい」
敢えてそんな言葉を口ずさむ