ピロティ
灰泥軽茶

小学生の頃
校舎と体育館の建物の間に
ピロティと呼ばれる場所があった

そこは特に何かをする場所ではなく
コンクリートの打ちっぱなしの壁があるだけで
ボール当てやドッチボールをするには
狭すぎて誰も使いようがなく
高学年になり
三角蹴りをして天井に手をついて
喜ぶぐらいしか用のない場所だった

ただ校舎から体育館をつなぐ渡り廊下を渡る際
必ずその空間が視線に入るので
何年も
その白いコンクリートの空間を眺めているうちに
いつのまにか
いつか学校が潰れたらそのピロティに侵入し
秘密基地にしたいと夢想するようになっていた

私は今夢の中で
高速道路下のだだっ広い
何もない空間にいて
そのピロティを思い出している

無機質で柔らかい空間は
幼いころの憧憬であり
もう見ることのできない景色だから

高速道路下に段ボールを敷き横たわり
断続的に途切れることない
生きている自動車の風切る音を聞きながら
広い広い白いコンクリートに囲まれ
目の焦点はぼやけ反転し
無意識の真白な部屋は膨らんでいく








自由詩 ピロティ Copyright 灰泥軽茶 2011-12-18 02:30:16
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