脳内の場所
木原東子
1
薔薇の棘に
誘われて秘密のところへ
行くのだ
死は疎ましいが
痛みはとくとくと滲む
何故だろう、胸もとどろく
恋も仕組みも知らない
しかし脳は準備していた
麻薬と混同と効果を
誘われ惹かれる痛みの中
しかし知ることになる日がくる
違う、痛いんじゃない
甘い椿の蜜
脳内のお隣りに
暴力のゾーンがある
2
初恋は全人的な陶酔にして
真心を捧げるもの
世にも不思議な魔力で
どこに導かれるのか
理解すら失う
すべての象徴としての
ひとりへの思慕
経血のリズムは余儀なく進む
月の満ちる夜
海に珊瑚の
受精卵が放たれる
密かに準備されていた
唯一の目標
身の内に海を
抱くまで
3
そのころに
快楽が特権を得て
初恋は終わる
手段のみが生き残り
目標と切り離された
混乱の元
夜
Y「イヤダ
イヤじゃないけどイヤダ」