ポケットの忘れ物
マーブル


男のあらゆるポケットに
忘れ物を入れておきました
夏の
塩辛い
木漏れ日の
青と
星臭い
銀粉と
羽根の生えた
さくらんぼの風景を


ひとつずつ
乾かないように
驚いて
逃げ出さないように
男のあらゆるポケットに
忘れ物を入れておきました


石ころ削って
道路に落書きをする
溢れる想像力を
どこかに
落として
ひかっているでしょう?
喉に
雛が住んで
ぴよぴよ
唄っている
私のか弱い
唄声よ



届いてるかなあ


男のあらゆるポケットに
忘れ物がどんどん増えてゆきます
松ぼっくりを拾う気持ちで
私は集めます


ターコイズの角っぽい
海風も
灰皿に浮いた煙草の
けむりも
消し忘れ
モノクロの回転木馬ばかり
ゆめみて
浮かれては
男は
沼に沈んでゆきます


だから私は砂のお城でただ一人きり
男のあらゆる忘れ物を拾い集め


ベッドの下にしまってから
リボンを巻き付け



ちゃんと届いているかなあと
その気持ちを抱き抱えるのです
私はこっそりやって来て
そっとサンタクロースのように
男のあらゆるポケットに
忘れ物を入れておきました


ジグザグ運転で
ソリはないけれど













自由詩 ポケットの忘れ物 Copyright マーブル 2011-12-16 04:45:13
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