いつか、風化してしまうくらいなら
折口也

私は殺されたい
あなたのこの尊い気配の
寿命がいつか果てるのを
恐々としながら
夜を明かすくらいなら
何もかもやがて衰え
劣化しながら滅んでゆくのが
私にはくるおしい

命が、
風化に晒されながら
今日を終えてゆく
また一日を見送って
あなたとの時を消費する
残された日々が解らないまま
不安の中で存在の
無常の揺らぎを恨んでいる

目を閉じていると
その寝息のいとおしさに
息がつまる
夜の世界に隔たれて
閉じ込められたこの部屋は
方舟のように無限に漂いだせはいい
過去なのか未来なのか
混沌とした夢幻に酔いながら

ああ!
やがて夜は明けてゆく
いつの間にか昨日とは違う鳥たちが
空に朝を告げにくる
いっそあなたを殺してしまおうか
時の流れがあなたを
風化させてしまうくらいならば
穏やかな寝息のそのままを留めるために



自由詩 いつか、風化してしまうくらいなら Copyright 折口也 2011-12-15 18:38:00
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