隻影
乾 加津也

 転がり
 笑いにおよぐ手は
 あなたの汀(みぎわ)に触れただろうか

いつしか愛は 大きく迂回する
あなたの的は
わたしたちの的であり
なのに欲しがるわたしの瞳はもろく
瑞々しい

分別は義理堅い
仕事と家庭を交互に行き来し 端をそろえたかと思うと
かなぐる深海のように
たちあがる

浸透するあなたに 社会はどこまでも朝を要求する
日々
精いっぱいの朝に
あなたはなった

 そんなとき
 わたしの小さくやわらかな足が
 あなたのみぞおちを蹴っただろうか

「なにを言うか」
はてしのない荒野になりはてた
あなたのありよう
滑らかな砲火で 
わたしの血はさわさわと沸きあふれ
今でこそ このシャベルで
あなたの堀を埋め尽くす 土塊で
優劣 善悪が土石のようにあふれでて ぽろぽろと
いつのまにやら視えない足もとを 腰抜けにする
やむにやまれず
わずかな匂いを辿り走れば
道絶えた断崖の 風に聳える
石碑(はか)
あかり




「存在(いのち)だけはことばではない」
あなたによく似た
この手は 裂ける


自由詩 隻影 Copyright 乾 加津也 2011-12-15 16:57:13縦
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