結納
はだいろ


結婚式はしないかわり、
田舎の親が、
どうしてもと言うから、
結納式というものを、
やることになった。

しかし、
結納とはナンジャラホイ、
わからないので、
由緒正しきホテルに、
説明を聞きにいくと、
まことにおめでとうございます、
と言われるから、
まことにおめでたいような、
気分にもなる。

マンションの頭金を、
非課税枠いっぱいに、
補助してくれると、
あのケチな父親が言うので、
ほんとうにホッとしたら、
結納のお金は、
お前が出せと、
せこいことを言う。
そういうふうに思うぼくこそ、
まさに、
父親そっくりに、
大きなところではおおらかで、
小さなところではせせこましい、
人間なのだろう。

彼女の両親は東京の人なので、
わりとさばさば、
どうでもよいかんじなのだが、
まあ、
そうゆう文化摩擦も、
結婚の楽しみなのかもしれない。
それにしても、
お金は飛ぶように出てゆく。
両親が、
東京へ出てくるホテル代込みの、
航空料金で、
ぼくの少なくなったボーナスは、
ほとんど吹っ飛んでしまうだろう。

女の子と、
遊びたいのに、
遊ぶひまも、お金もない。
こうやって、
ひとつの人生の、
ひとつの季節が、
過ぎてゆくのかもしれない。
地下鉄の行き帰りでは、
藤沢周平の小説を読んでいる。
時代小説なのに、
40すぎのサラリーマンには、
実に、
鏡のように、
身につまされるお話である。






自由詩 結納 Copyright はだいろ 2011-12-08 21:33:15
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