草野春心



  朝の町は
  赤く輝いている
  透明な蝶が群を成して
  燐粉を煌めかせ舞い飛ぶ
  駅へと続くなだらかな坂道
  冬空に灰色の息を吐き
  自販機でコーヒーを買う人



  夜、
  僕が眠っている間
  この町は一度燃えてしまった
  暗闇に炎を揺らめかせ
  細かな灰へと姿を変えて
  妖艶な踊りを踊りつづけた
  それから、再び
  ひとつずつ家が組まれ
  人びとは暖かな毛布の下に
  そっと、優しく置きなおされ



  殆ど同じ場所に
  殆ど同じ形で
  僕たちは目覚めを与えられた
  朝の町は赤く輝く
  蝶の花びら舞う道に
  きみの声がふわりと微笑む
  足音が、愛とかなしみを歌う
  それは小さな炎のように
  何度でも
  僕の心を燃えあがらせる





自由詩Copyright 草野春心 2011-12-08 08:45:43
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