テクテク
藤鈴呼

暑いなぁと 思った
ユニフォームの下には
長袖シャツ

腕用の 日除け手袋は
繊維が 絡み付いて
痒く なるから

ユニフォームは
市職員と同じ
ジオサイト限定なので

何だか 今日は
プライベートで 居たいな、と
長袖のままで 出掛けた

ゴミ袋を 持って
テクテク 歩く
出勤前に
少し 早足で

ふいに 女性の声がした
「あーっ 気持ち良い!」

何だか 明るい日差しに
似合う声

ずっと年上だけれど
若さ溢れる 笑い声

営車の掃除でも しているのか
荷物を 積み込んでいるのか
同僚との会話が 響く

新車のニオイって
やっぱ 気持ち良いネ って。

革張りの
見知らぬ町の 風が

その言葉と共に
心に 住み付いた気がした

自分専用の 車を持ったら
線路沿いの 通学路を
これで 走るんダ

期待に胸を 膨らませ
ペダルを 必死に 漕いで居た
十代の頃を 思い出した

タイヤは
何処に 連れて行って 
くれるのだろう

ハンドルは
何を 求めて
切り裁いたら 良いだろう

夢だけは
あの 虹と 同じ軌跡を
描きたいな

日々 見詰める 翡翠は
純粋な 輝石だから

幾つもの 想い
かき集めながら

まだ 進める
そう 信じるしか
ないんだもの

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自由詩 テクテク Copyright 藤鈴呼 2011-12-07 21:32:40
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