雨女
faik

寂しさの上に
雨が降る

怒髪の上に
雨が降る

導きの上に
雨が降る

約束の上に
雨が降る

しとしとぴっちゃん しとぴっちゃん
そんな気の良いもんじゃない
じとじとべっしゃん じどべっしゃん
ネコもシャクシもヤドリギも
わけへだてなく へだてなく
じとじとべっしゃん じどべっしゃん

気丈の上に
雨が降る

苦悶の上に
雨が降る

安らぎの上に
雨が降る

虚ろな僕にも
雨は降る

傘なら鞄に在るのだけれど
僕の両手は煙草と缶と
当処も途方もない自意識で
今日も今日とていっぱいなんだ

そんな僕の姿を見やり
不憫そうな目をする老婆
「違うんだ。これは、ただ……」
それだけのことを伝えられない
それしきなのに伝えられない
後ろ髪を引かれながら
勇み足で歩む道のり


(ごめん。
 だけど、
 むねが、
 苦しい)


じとじとべっしゃん じどべっしゃん

一会の上に
雨が降る

至情の上に
雨が降る

悔悟の上に
雨が降る

呵責の上に
雨が降る


じとじとべっしゃん じどべっしゃん

是非も知らずに
奴は降る


自由詩 雨女 Copyright faik 2011-12-06 21:05:28
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