てのひらの海
そらの珊瑚

小さなガラス壜の中は海
群青のさざなみでゆらめく

海をコレクションする女は
孤独であるけれども
絶望的に孤独ではなかった
本当の海まで
もはや歩いていくことは不可能
この部屋から出るためには
幾十にも巻かれた
鋼の鎖を断ち切らなければならないが
女にはそのための道具がない

残されたものは一本のペンのみ

不幸であるけれども
絶望的な不幸ではなかった
いつかガラス壜の海に
このペン先を浸して
手紙を書くのだ

その時
文字は
かすかにふるえ
未来に向かって
滲みゆくことだろう




自由詩 てのひらの海 Copyright そらの珊瑚 2011-12-03 09:42:48
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