イメージという名の傷跡
ただのみきや
決して建て終わることのない塔がある
光をまったく反射しないその塔は黒い輪郭に
太古の文様を刻んでいる
日の光のもと
それは実体のない白い影となって横たわり
存在を忘れさせる
が
心におびただしい黄昏が這い上がってくると
おびき寄せたように目の前に立つ
ことばに浮かんだ蜃気楼のように
心臓は凍った時計と入れ代わる
時折
黒いコートの女に姿を変えて
大理石にはめ込まれたオニュキスのように
こちらを見つめている
声もなく
表情もない
絶対零度の抗議
だが
そのコートの下にはただ
イバラが生えていることを知っている
決して建て終わることのない塔がある
光をまったく反射しないその塔は黒い輪郭に
罪悪と苦悩を刻んでいる