草原へのコラージュ
草野春心



 「歯」

  数匹の
  蟻とともに
  おまえの白い歯が
  焼かれている
  雨は
  降らず
  風だけが、その
  匿名の乾きを
  旗印のようにたなびかせている



 「遊戯」

  私が両手のひらを開いて
  親指同士を結ばせると
  透明な蝶が足もとに羽ばたく
  そこの君、
  鋸か何かで
  私の両手を切り落としてくれ



 「子等の声、子等の影」

  果てしない広さの向こうから
  子等の声が響く
  遠くからだとそれは
  泣いているように聴こえるが
  近づいてみると彼らは笑っている

  果てしない広さの向こうで
  子等の影が踊る
  遠くから見るとそれは山火事
  もう少し近づくと
  それは奇怪なダンス
  もう少し近づくと子等は
  黒く焼け焦げながら身もだえしている



 「通路」

  額の広い
  八歳前後の女の子が
  維管束の中を駆けてゆく
  遠い昔
  彼女が生まれた日より
  遥か昔
  箱に入れて捨てられた
  一匹の柴犬を追って






自由詩 草原へのコラージュ Copyright 草野春心 2011-12-02 18:46:25
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コラージュ×4!