マネキンの若い女
subaru★
月曜日
突き刺す気嵐の中
若い女が ビールを振る舞う
突き刺す気嵐の中
マネキンの片手に数羽の鳥が止まる
火曜日
隕石が飛び交う真夜中
若い女が アイスを振る舞う
隕石を避けて生きる真夜中
マネキンの片手に数羽の鳥が止まる
水曜日
何度も何度も快速を見送って 各駅停車を待つ
少し疲れた若い女が 焼肉を振る舞う
何度も何度も快速を見送って 各駅停車を待つ
マネキンの両手に数羽の鳥が止まる
木曜日
魚たちの遡上を横目に 急流の銀座に佇む
足のマメを気にする若い女が イカの塩辛を振る舞う
魚たちの遡上を横目に 急流の銀座に一人佇む
マネキンの右肩にも数羽の鳥が止まる
金曜日
繋がらない相手の連絡先 諦め切れないとリダイヤル操作の指が動く
ナチュラルハイの若い女が 沢庵を振る舞う
繋がらない相手の連絡先 いつかは削除できるだろうと思い始める
マネキンの・・・鳥が・・・増えてきてる
土曜 日曜 週休二日
マネキンの若い女は店に居ない
単発派遣のアラフォーが 朝から張り切ってる
この店の活気が 深夜でもないのに三割増しだ
獣たちは警戒しながら赤子の餌を模索している
月曜日
新しいマネキンの若い女がウインナーを振る舞う
これだけ人は居るのに
孤独と背中合わせで働いている
これだけ人と接しても
孤独と抱き合ってマネキンが佇んでいる
その孤独から温かみを受け取る鳥たちは
マネキンの手に止まる
この文書は以下の文書グループに登録されています。
十二月のうた