秒針
まーつん
(僕)
追いかけてくるよ
時計の秒針が
片づけても 片づけても
後から 後から
新しい仕事が 湧いて出てくる
さながら蛆のように 白く まがまがしく
時間という競技トラックの 前方に
喜々として身をよじらせ あふれかえり
その小さな責任の群れが 僕にむかって
飛び掛かってくるんだ
情熱は どこに行った
理想は どこに置いてきた
いつから仕事は 喜びではなく
ただの義務へと 変わり果てたのか?
*
(もう一人の僕)
なあ おまえさん
まるでハツカネズミみたいに 走り回ってさ
そんなに目をぎらつかせて 実は 何も見えてないんじゃないのか?
そんなに焦るなよ 約束なんてほっとけ
おまえさんが 気にかけなきゃいけないのは
クライアント なんかじゃない
じつは 自分自身なのさ
いいかっこなんか しなくていい
やりたいことを やれよ
それが やるべきことなのさ
深呼吸して 足取りをゆるめて
あたりを みまわしてみなよ
わかるだろ
あんたを追いかけてくる秒針
それは ただの
幻でしかないんだよ