痴呆の季節
乾 加津也
指関節をなんど曲げても
言葉がどこにあるか
わからない
人類の要素のひとつ わたくしも
紙とペンで書いた言葉を 今は
平原に向かって 打つ
古いノートPCのバ
ッテリーを強くする
ため、初めて完全放
電で停止させた、充
電ゼロのサインを約
十五分も発信しつづ
けたあと、いよいよ
わたしも疲れたよ、
きゅーんと事切れた
これからを
充電をはじめるまでを
痴呆の季節と呼べるだろうか
襟を正すテクノロジーは
永遠からも貶められる
繁茂した
言葉(きごう)の気根に見放され
これまで一度も袖を通したことのない
みずからの
末梢神経をひらきつつ
言 葉 が ど こ に あ る か
言葉の余有素(りんかく)が天窓からふりそそぐ
のか
向き合う
わたくしに
滑り台の R のように
ささやくように
傾くように