母は100円の森で
たちばなまこと
100円の森であなたを捜す
あなたは私の5cm上で
森と遊ぶ
母さん
私は5歳です
あなたを見つけられなくて
今にも泣き出しそうなんです
今は大人の身体に居るから
平気なふりで立っています
ヒールの音は 堅いフロアに響きます
はぐれた女の子を 捜しに来てはくれないのですか
瞳の中にまでうつろ虫が入ってきました
とって
早く
走って 足をばたつかせて 泣き出したいんです
安っぽい文房具の前 肌が荒れそうなクリームをよけて
惜しみなく割れそうなせとものの横を
母さん
あなたはするすると抜けてゆく
若いお兄さんの行き止まりにあったり
所帯じみた幸せそうな夫婦にせき止められたりして
女の子は何度だって
見失ってしまうのです
仕方なく手に取った携帯エチケットブラシ
こいつは大人の持ち物ですね
私は何一つ買えやしません
あなたはあきれる程にこの森が好き
憧れる程に衝動的
私のうつろなどコンマ1秒で笑い飛ばす
底抜けの楽観を持っている
レジで再会したあなたを待って
クラシックCDを眺めていた
通り過ぎる前
左の横顔 私と同じ流し目で
「何かいいのあった?」
「何もないよ。」
本当は何か 見つけたいと思っている
あなたと同じ冒険で