それが余震なのかもわからない
rabbitfighter
あの日から数えて何度目かの地震かわからない
そもそも数えていないのだかから
わかるわけがない
それが余震なのかもわからない
震源地を確認して
津波の心配をしない
東京湾は
そもそも入り口が狭くて中がひろいから
津波の心配はしなくてもいい
まるで何年か前に付き合っていた女の子のアソコみたいだ
東京湾みたいなアソコの
東京わん子ちゃん
でも万が一
津波が襲い掛かってきて
湾岸地区に立ち並ぶ高層ビルやマンションは
避難所としてあるいは
堤防として役に立つのだろうかと
首都高湾岸線を走りながら思う
それからまた戻ってきてしまう
横浜中華街のオリエンタルホテル33号室に
ひび割れた壁とドラクエの宝箱の鍵のような鍵
テレビの中で燃える工場
東京湾を縁取る炎
つながらない電話
つたわらない会話
だけどそれらが余震なのかもわからない
希望としての嘘と
ごまかしの為の嘘が
錯綜しながら渦巻いて見分けがつかない
割れ落ちた窓ガラスを迂回して歩く
家路へと続くと信じたい道を歩く
長い人の列
恋人からメールが来て
前の恋人からメールが来て
前の前の恋人からメールが来て
東京わん子ちゃんからもメールが来て
それからみんながつながろうと言い
それからみんながたちあがろうと言い
つながろうとするたびに地面が揺れて
たちあがろうとするたびに地面が揺れて
地面が揺れるたびに祈るような思いで
その揺れを受け入れる
拒むことなんて出来ないから
苦い薬を飲み下すみたいに受け入れるけど
だけど
それらが余震なのかもわからない
優しくなって
朝起きるたびに涙が止まらないと言う君へ
沢山泣いて
亡くなってしまった人たちのためにと言った
思えばおれ自身は
一度も泣かなかった
その代わりに何度も何度もあの
オリエンタルホテルの33号室に連れ戻された
震源地は東北沖らしい
津波と原発が心配
今日突然からだが震えて
それも余震なのかもわからない