テロリストの咳
はだいろ

マンションの手付け金、
10万円を、払った。
彼女と、手打ちパスタのお店を、
ランチできのう今日と食べくらべた。
なにも、
面白くない。
テロリストにさえなれない。

水天宮に、
戌の日の安産のお参りに行く。
ものすごい行列で、
あんなに、妊娠5ヶ月の女性が、
ずらずらと並ぶのを見ると、
世の中、
ぶさいくばかりだと思う。
彼女が手を振る。
ぼくも人並のみっともなさだから、
けっきょく、
お似合いなのかもしれない。

彼女の、
毎日大量に飲んでいる薬のことが、
どうにも気になって、
気になりだすと、
たまらなくなる。
ネットで検索しても、
妊婦が絶対に飲んではいけない薬を、
やっぱり、
妊娠初期に、飲んでいる。
あまりの頭の悪さに、
吐き気がするほど腹が立つけれど、
でも、
今さら、
そんなこと言ってもしょうがないので、
にこにこして
頭をなでてあげる。

ふつうに働いて、
人よりは、
不器用かもしれないけれど、
なんとか、
毎月給料をもらっているのに、
税金やらなんやら、
けっきょく、
住むところひとつ、買うこともできない。
どうして、
そんな国になってしまうのだろう。
やっぱり原罪というものがあるからなのだろうか。
それとも、
キリスト教はそもそも資本主義のマニュアルなのだろうか。

ぼくの夢って、
いったいなんだったのだろう。
近所のすてきな、
小さなお店をひらいた若者は、
どうやって、
夢を見失わずにやってこられたのだろう。
このごろ咳がやたらと出る。
何も面白くない。
テロリストにさえ、なれない。





自由詩 テロリストの咳 Copyright はだいろ 2011-11-27 21:14:00
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