探索
葉leaf



すこやかな悪魔が科学の哀しみをそぎ落とす、見下ろす風景に書かれた哲学を精密に削り出している。緑色の空の稜線を白い葉が伝っていく、清潔な堕天のおしゃべりに体積をついやしている。悪魔はしなやかな指先で倫理のつめたい額に触れた、過ぎ去ってゆく空間の筋をほどいて、神への恋慕を背中から生やしたままで。



疲れていた。思い出すのはこどもたちの着地の描いた青い球体だ。光りすぎると影の置き場所を間違えかねない。疲れていた。あらゆる信号の替わる音がおびただしく聞こえる。あの夕日は赤信号が集まったものだ。疲れていた。波の化石を睫毛に絡めて海の死体を見下ろしていた。腐敗する海流の無数の先端が思想の完璧さで自壊していった。



意志を動かす意志のための光速の墓場で、僕たちは脚を買い求めた。魚の滅んでゆく絵巻物に流れる炎の本籍地で、僕たちは胴体を盗んだ。他人の言葉の影を踏むのが趣味の強姦者の家で、僕たちは腕を探し出した。三角形が角度を治してもらう病院の時雨れている病室で、僕たちは頭を掘り出した。そして僕たちは僕たちの体を組み立てて、やっと死ぬことができるようになった。



彼はあらゆる速度を角度に換えてしまうのだった。自動車はその速さの分だけ真ん中から折れ曲がった。続発する連想もその速さの分だけあらぬ方向へ屈折した。そして彼はあらゆる角度を速度に換えてしまうのだった。CDには角度がないのでプレーヤーはそれを回転させられなかった。三角形は異様な速さで飛び回り、直線に姿を変えてしまった。


自由詩 探索 Copyright 葉leaf 2011-11-27 04:48:43
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