蜃気楼の魚
三条麗菜

私とあなたのこれからを
たとえるなら広い広い海であり
小さな舟であっても
きっと二人なら渡ってゆける

嵐に巻き込まれ
高波にあおられて
突然の海流に流されても
きっと私たちは離れずにいられる

ただ水平線近くに
揺れる魚の蜃気楼
私たちの絆が壊されるとすれば
あの生き物たちだ

海がひどく冷たい時に現れる
あの幻の魚は
あまりにも悠然と泳ぎ
あらゆるものを超越する
光の法則がこの世界から
失われる時まで
あの魚は命を失わないだろう

あの魚はいずれ
私たちの子供を食べに来る
あなたは守れる?
守れない?

それとも信じない?

幻は一つの物語となり
私の口を通じて
子供に襲いかかるだろう
眠りにつく間際の
私の言葉は
揺らめく蜃気楼の魚たち
それは子供を飲み込んで
いずこへと連れ去ってゆく

それを止めることができるのは
あなただけ
襲われてからでは何もかもが遅い

ありふれた生活の中で
周囲の人しか目に入らなくとも構わない
その人たちの中で
うまくやってゆけるなら
そのための言葉を
あなたから授けてほしい

蜃気楼の魚に
襲われる前に


自由詩 蜃気楼の魚 Copyright 三条麗菜 2011-11-27 00:13:44
notebook Home 戻る