35年後の世界
はだいろ

午前中、買おうかどうか、
迷っているマンションへ、
日当りを見定めに行った。
小学校から坂道をくだって、
建設中のマンションの前に、
自転車で下りると、
真向かいの家の影が、
まだ、
いちばん安い二階部分には、
届いていなかった。


いちばん安いといっても、
4270万円である。
一万円札でゆうと、
4270枚である。
もちろん、そんなお金は持っていない。
だから、
銀行に、借金を申し込むのである。
ぼくの人となりから判断してもらい、
国の政策で、
安い金利の、35年ローンを組んでもらう。
そうすると、
毎月の支払いは、だいたい11万円くらいになり、
77歳で、
支払いが終わるという計算になる。
ひとことで言うと、
狂った話ではある。


表参道を歩くと、
なんだか、東京のひとになったような、
モダーンな気分になれる。
青山円形劇場で、
イキウメの舞台、「太陽」を見る。
イキウメは、このところ、
ずっと見ている大好きな劇団なのだけれど、
今回も、現実をすこしずれた、
曲がり角へ連れて行ってもらえた。
それから、タワーレコードへ行って、
突然変更されたポイントカードのポイントを、
ぜんぶ使ってしまおうと、
ワールドコーナーへ行って、
見た事も聴いたこともないミュージシャンのCDを、
ちょっと試聴して、
勘で買った。
perfumeの新作も、買っちゃおうと思ったら、
29日発売ということだった。


新宿で、
「いちご白書」を見る。
むかし、ビデオで見たけれど、
女の子が可愛いだけの映画だったように思った。
でも、
ポスターが欲しかったのもあって、
見に行ったら、
やっぱり、女の子が可愛いだけだった。
でも、
やっぱり、ユーミンの歌を聴いたら、
「いちご白書」のポスターは、欲しいので、
大きいのを買ったら、大きすぎた。


帰って、
yahooのニュースを見たら、
談志死去と、出ていた。
えっ、
と一瞬、近所で見た、
家元を思い出した。
ぼくの近所に、住んでいたのである。
とうとう、
家元の落語は、一度も聞くことは、
かなわなかった。
ぼくは、この街が好きなので,
この街に住みたい。
たとえ、NTTが、無人の電波塔を、
人権を無視して、
金儲けのために、建てるのだとしても、
この街が好きなのだ。


35年後は、近未来で、
もはや、
SF的な世界でもあろう。
会社なんて、いつつぶれるか、わからない。
地震がいつ来て、
原発で関東が壊滅するかも、わからない。
そんな世界に、
子供を、
送り込んでも、いいのだろうか。
ぼくはとても、苦しみ、悩んでいる。
いつも、
周りから遅れて、
最後衛を、歩いているのだ。
いちばんうしろを、
歩いているのだ。






自由詩 35年後の世界 Copyright はだいろ 2011-11-23 21:08:19
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