平行世界、飛行ねこの沈黙
宮岡絵美

夕焼けに飛行ねこが飛んでゆく

夕焼けに飛行ねこはあうのだそうだ

赤く熟れたトマトとクリームチーズくらいに

飛行ねこは大きな群れをつくり

それはまるでひとつの地平線を形成しているようにみえる

全体はゆっくりと西の方向へ動いている

群れ、また群れ

大空を一面に覆ってしまう程の

一匹一匹が空中で四肢を動かす様子は

まるでそこに巨大な空中回廊でも存在しているかのよう

まるで永遠のそれは



飛行ねこは気だかくある

決して鳴かず 静かに

大自然に溶けあうことを許された

特別な存在であることを受け入れているように

その生態はよく調べられてはいるようだが

人々は口には出さない

黙って空を指さし

(ほら、飛行ねこがとんでゆくよ)

空を見上げ

心の中で頷く

どこか神聖な 許された存在なのだ

その風景自体が

我々の生存をつよく肯定してくれるような



風が吹きつける

飛行ねこ達の足並みは少し乱れるが

大勢に影響はなく

群れは力強い足取りで

ゆったりと進行してゆく

見上げると互いに戯れあっているものもいて

相変わらず風は吹いている

我々はしばし遠くの空を見上げ

銀河系にひっそりと放たれた

たとえば

飛行ねこのような生きものの存在を必要とする

地球の将来に

遠く思いをはせてみる



http://www.eonet.ne.jp/~tobeistodo/hikounekopoem.html


自由詩 平行世界、飛行ねこの沈黙 Copyright 宮岡絵美 2011-11-20 11:10:01
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