幸せで可哀想なタカちゃんへ
相差 遠波

なんて幸せで可哀想な子なんだ!タカちゃん

大人用の洋ナシのタルトには
洋酒が効いている
一口もらって『辛い!』と評した
その味覚に驚いた
ひねた舌には
たいした刺激にもならない隠し味を
一口にして看破した

カジュアルレストランで両親が
あまり量の食べれないタカちゃんにと
注文したカレーライス
店を出るときに『まあまあやな。』と
本当にまあまあな味を判定した

祖母が買ってきてくれた
某有名店のクリスマスケーキのあとに
両親が予約していたキャラクター物の
バタークリームケーキを食べて
小首を傾げた時なんて
まだ長い文章が話せなかったよね

なんて幸せで可哀想な子!
こんなに敏感だと
不味い物だって解りやすい
美味い物だって見つけやすいけど
どうしたってハードルは上がっていくから
彼は食べれば食べるほど
不味い物が増えていく事になる

なんて幸せで可哀想な子!
その味覚は両親と
周りのたくさんの人々に愛された証
三歳までに様々な味覚に
出遭わせてくれた幸せの財産

だけど彼はその財産のせいで
愛のこもってない物に気付きやすい
それが社会に出た時に
負担にならなければいいけれど

タカちゃん君は
幸せで可哀想な子だ
敏感であるが故に
気付かなくていい事まで気付いてしまう
だけど幸せな基準があるから
そこを目指して生きていけるだろう
だからやっぱり

君は 幸せな子だよ タカちゃん


自由詩 幸せで可哀想なタカちゃんへ Copyright 相差 遠波 2011-11-18 10:44:53
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