冬眠しないことば
かんな


降り積もる季節になりました
おもいが
私は忘れていた何かを思い出し
振り向いたり振り向かなかったりします
移ろう
というのは少し悲しいことかもしれません
それとも私は悲しいということばに
ぬるま湯に
浸っているだけかもしれない

おもえば
それなりにながい季節をいきていて
降りかかる結晶を
握りしめたことなどなかったかもしれません
やさしくない
そういうことではないと思っています
ただ大切なものを
大切にしてこなかったという
溶けていくような
後悔にときどき苛まれるのです

空を見上げて
あたりまえのように広がる
しあわせだったりしあわせでなかったりするものを
つかもうとして
つかめなかったりしています
夕焼けは
なんの終わりなのか
朝焼けは
それともなにかの始まりなのか
たいようは
簡単に私というにんげんを翻弄します

冬になります
それだけで何かが定まってしまうかのように
大気はこごえる
かじかんだ手の先をぬくめます
白い息を吐くだけで
ことばは冬眠をはじめる
いちぶの
眠りにつけないことばたちを集めて
つたない羅列を作ります
この季節をくぐりぬける文字列のつよさに
私はこころをあたたかくします

いつしか春になります
その想像を片隅にしまって
今はことば少なにいきていくのです





自由詩 冬眠しないことば Copyright かんな 2011-11-16 10:27:00
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