建国記念日さんと星座
ズー
突然、係員はやってくる。季語の整理をはじめますと手招きをして、観覧車をもたつかせない。あー、ちみね。ちみ、季語でいうところの、間抜けなオリオンだわな。だって、空のはなしばかりしてくるもんね。空のはなしばかりしてくる奴のまわりは聞こえないふりをする女ばかりになるよね。だからやっぱりマヌケじゃん。軒先の雨垂れはすんすんと落ちる雪のなかで氷柱にかわる真夜中のおはなし。いや、ちみ、観覧車に乗ってからも私語厳禁だからね。と半分女になりながら、口元に人差し指を立てている係員の向こう側で水遊びさんときりぎりすさんが乗り込んでいった。私のとなり、建国記念日さんの咳ばらいが響いている。
星が落ちても、そのままにして、町の雪のまっしろを蹴飛ばしていた、6歳くらいの影たちが溜まりになって、新雪のかぶさる雪を転がしたり、溶かしたりしている。除雪車の大群のおしゃべりが続いている国道や、農道を、なぞるように星を見つけた、いくつもの足跡があたたかいまま、また、しろく積もり、溜まりになっていた影たちの散り散りに帰っていく町にも、星は落ちていた。軽くなって遠くなる空のはなし。を。もうすぐてっぺんにつく観覧車の向かい合わせに座り話した。聞こえないのか聞こえないふりをしているのか、私の話し相手はそういう女になるらしい建国記念日さん、黙って外を見ている。目線の先、硝子に指を押しつけて、こんなとこにも空があるんだねって言ったあとに、私も、星座を探すことにして、黙ったまま。息もしろく。