被験
伊月りさ

書き溜めた理想が
燃やされて、
吹き飛んで、
わたしは扉も満足に閉められない
検体になる

眼球の
背びれ、胸びれ、尾ひれ、の連動がなす
鱗の反射にいち早く気づく若者よ
両肩が雪崩る音に
いち早く逃げ出す若者よ
それが来光の音でないことを
逐一書いて知らせるのはなぜだ

きみたちにさらされて
必死に
本を開くように
冷静に
脳天から割れて
そこに
わたしが埋もれていないことが明らかになる
パンツを履き忘れた子どものように
  ごめんなさい、
堂々と乖離してしまって
暴走する外言
整った暴走
にすら遠ざけられて

実在を悟ったのなら
それを命名できたのなら
少しは尊厳になったのかもしれない が
いずれ若者は見破る
  うしろめたい肛門、
  はらんでいない命、
  眼光のないファンタジーは悪意、
そう わたしに知らせるのはなぜだ

知らせてほしいと願うのは
なぜ
適切な砂場などここにはないのに
  どんな難解なさかあがりを試みても
  もうだれもおしりを押してくれない、

まだ
大脳をかきまぜなければならない
わたしへの責任が
きみたちに媚びをうり続けて
明日も
はねのけてもらわなければならないわたしについて
まだ
記録している
指先に摘み取られて
世界の外へ放られる


自由詩 被験 Copyright 伊月りさ 2011-11-12 18:36:25
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