関東炊き
相差 遠波

コンビニでお昼におでんを買う
予算内に納まるように三つだけ
出汁はたっぷり
冬が近い

お腹の中からあったまりながら思う
ああ 関東炊きが食べたいな

おでんじゃない 関東炊き
ここは関西だから 関東炊き
鶏ガラから出汁を取るコッテリ濃い味の 関東炊き
実家の食卓に出るおでん 関東炊き

今食べたロールキャベツや餅巾着とか
しゃれた具なんて無いし
あっさり美味しい昆布出汁でも無いけれど
家族六人がこぞって食べた
蒸し器のはずのお鍋にいっぱい
底に沈んだ卵を取り出すには
盛られたノルマをこなさなきゃいけなかった

ゴボ天 平天 ひろうす きくらげ天
じゃがいも こんにゃく 厚揚げ 大根

これだけ食べてもまだ無くならない
いい具合に味の染み込んだ卵の黄身を
煮詰まった出汁で溶いて
お代りをつけて食べた

おじぃちゃん おばぁちゃん
おとうさん おかあさん
おとうと わたし
たまに おじさん おばさん

あの味の出る関東炊きの量は
二人では荷が勝ちすぎる
だからやっぱり
コンビニで買うしかないんだな

ため息 ひとつ

コンビニでお昼におでんを買う
なるべく洒落た物を二つだけ
あとの一つは〆の玉子
想い出はたっぷり
冬が近い


自由詩 関東炊き Copyright 相差 遠波 2011-11-11 16:40:11
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