ありがとう
吉岡ペペロ



午後の光が池の面に煌めいている

前の組が進み後ろのひとが打つまで

俺はその煌めきを見つめていた

待っているあいだに力んでしまわないように

意識を煌めきに移していた

パーボギーパーパーと続いて

知らず知らずのうちに

体幹に渇いたしこりのようなものが付着し始めていた

これが力みなのだ

前の組が進みキャディーから声がかかった

まず後ろのひとが打った

次は俺の番

池の面の煌めきを思い浮かべながら

素振りなしで打つことにした

ボールはグリーン横のバンカー方向に向かって高く上がった

6番アイアンがラフに食われて少し開いてしまったのだ

足もとに置いたクラブを拾い上げて歩きだしたとき

池の煌めきが彼女の友人の言葉となって哀しく広がった

○○ちゃんは弱いところがあるから、男なしじゃ生きてはゆけないのよ、

友人の言葉が煌めき俺の胸を焦がした

でもね、○○さんといるとき、○○ちゃん、今まででいちばん安らいで見える、

友人は俺の一瞬の落胆を見てそう言った

あのラフからアイアンで、あんだけ飛ばすなんて、ナイスショットですよ、

そう声をかけてきた男も俺の落胆を見抜いたのだろう

ありがとう、あの時も俺は彼女の友人にそう返した


携帯写真+詩 ありがとう Copyright 吉岡ペペロ 2011-11-10 19:05:01
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