波に消される文字に / 自分よ、心のままにあれ
beebee






打ち寄せる砂浜に
文字を書いている

崩れ消えて行く文字達

流木を持ち
強く刻み付ける

水際に暗く強く
かき消されないよう
しっかりと深く刻み付ける

心のままにあれ

自分よ、心のままにあれ

想いは強いが文字は流れて行く
波に崩され滲んでいく

冷たい風が吹いている
それが頬に心地よいのだ

渚は意外と賑やかに人がおり
遠くには子供連れの家族がちらほら見えた

背筋を伸ばした犬が子供の横に立ち
此方を見ている

家族の輪がゆっくりと移動して行く
拡がったり縮んだり
波の稜線を移動して行く

一人で海岸に来て見ようと思ったが
白々とした日射しに賑やかな情景は返って淋しい

心のままにあれ

独り笑いを浮かべた
交わらない心は何も生み出しはしない
分かっているのだ

靴を脱ぎ靴下をその中に突っ込んだ
砂は冷たい脆い今の心だ

濡れて硬い砂地は鋭い痛みを感じさせた

何でも心のままにあるのだから

波に入っていった
海の中は意外に温かかった

渚に印した文字が
滲んで消えて行くのが見えた






自由詩 波に消される文字に / 自分よ、心のままにあれ Copyright beebee 2011-11-10 07:28:06縦
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