靖国通点描
……とある蛙


靖国通りの先に大きく聳える
東京スカイツリーの展望台から上部ユニット
メタル素材の三つの顔が浮かんでいます
陽光を反射するでもなく
ぎらりぎらぎら照り光っています。

ゆっくり靖国通りを駿河台下から岩本町方向に歩いて行く。旧ミナミスポーツのくの字に折れたところから岩本町方向を望むと丁度東京スカイツリーが真正面に来る。見えるのは東京ケンネルのあるビルが邪魔をして、第一展望台から上の部分で電波塔部分がやけに長く感じる。建設中には上部アンテナ部分の横に二本クレーンが付いており、まるで巨大な蚊の頭部のようだった。

三つの顔はそれぞれ表情が違い
一人は朗らかな笑顔で
まるで秋晴れを祝福しているような顔。
しかし、ぎらついています。
一人はかなり深刻な顔をして
深い皺には苦悩が刻まれ青ざめた顔。
しかし、ぎらついています。
一人は怒った顔で
眉毛はつり上がり、目は大きく見開かれて怖い顔。
しかし、ぎらついています。

小川町の交差点まで行くと東京スカイツリーは見えなくなる。後日分かったのだが、靖国通りから一本大手町寄りの路地から見ると真正面にスカイツリーがある。

小川町の交差点に鯛焼き神田達磨の隣にあった刃物屋の菊一文字が閉店し、その後釜に寛永年間創業の和菓子司の寛永堂が開店するようだ。隣の鯛焼き屋と相まってこの辺りはちょっとした和のスウィーツコーナーになってしまった。

三つの顔は年齢が違うようです
一人は十代の少年のようで
まるでこれから好物を食べようとしている子供の顔で
しかし、ぎらついています。
一人は三十代のサラリーマンのようで
板挟みの苦悩は解決のつかない問題の苦しみで
しかし、ぎらついています。
一人は五十代の初老のようで
怖い顔をしていますが、どう見ても疲れていて
しかし、ぎらついています。

靖国通りをスケッチする人は、しばらく岩本町方向に向かってカンバスを据えるのだろうか。水彩で描くと意外に綺麗な風景が描けるかも知れない。現実には忙しくて都会の喧噪真っ盛りの土地であっても。


自由詩 靖国通点描 Copyright ……とある蛙 2011-11-09 10:01:29
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