優しい色
森未

「明日という希望の光」
なんていううさんくさい言葉を
わたしはいつまでも信じられないまま
からだだけ大人になって

背けたい真実と
妥協する常識と
逃げられない世界に
がんじがらめになっている

それでも
おおぜいのひとは
「おはよう」
と微笑んでいる

それさえもいつか
はがれていくのかもしれない
ぎりぎりの毎日に
いつか慣れていく
そうして忘れていく
そうしないと
呼吸できなくなって
夜と朝の境界線に
いつか吸い込まれてしまうのでしょう

誰だって
言いなりになりたいわけじゃない
けれど
なれていく
こわれていく
ゆがんでいく
ひずんでいく
ぬりつぶされていく

それでも
信じようとする
うさんくさい未来を信じようとする
怖いって知っていても
ふたをして
信じようとする
いとしい人たちは
苦しんで、ひっそり泣いて
微笑んで、優しくなろうとする

この世界は
たくさんのいろのいろえんぴつで落書きしたみたいに
ぐじゃぐじゃで
美しくて
悲しくて
優しい色をしている





自由詩 優しい色 Copyright 森未 2011-11-08 17:43:10
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