invisible,
豆椿
映った陰を追いかけたら、
陰は走って逃げ出して
止まった陰に近付いたら、
陰はそのまま動けなくなった
僕は日差しがまばらにさす階段の下にいて、
金色がかった眩しい日差しを、影の下で座ってみていた
走り出した陰に、実態はなかった
人の形をしたそれは、大人でも子供でもない身長位で、
遅くも早くもない速さで、さっさとその日差しから行ってしまった
透明人間じゃないでしょう
足音も何も聞こえなかったから
透明人間はいないでしょう
だってそんなの見たことないから
空でカタリと音がした
見上げたら空では小さな扉が開いていて、
階段から続く細い道の上で、
キィキィと音をたてていつまでも閉まらずに揺れていた