遺産
乾 加津也

だれのものか
だれもしらない
島の ちむは
たましいの遺産

戦世(いくさゆ)でも
混血でも
総決起でも
珊瑚あたまのガジュマルが
三線片手に汗かき鳴らして




愛しく
ときを逆なでする しおさいをききに
浜辺にでようと アダン越し
ヤドカリの爪は砂面をこそぎ
ただそれだけの島のはずだが

 にへーでーびる またん
 ちゃーびらやーさい

垣をぬければ
どすんと落ちるあかね雲
これも失せない おまえの花園
わたしのほほにも
あなたの瞳(め)にも






*ちむ=肝(きも)
*にへーでーびる=ありがとうございます
*ちゃーびらやーさい=伺います


自由詩 遺産 Copyright 乾 加津也 2011-11-07 14:25:31
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