クモ膜下のプルツー
シリ・カゲル

空に突き出た崖の上から
ジョイスの愛さなかった犬たちが
次々と転調する。

スタウトのげっぷが充満する塹壕で
マー油にまみれた銃器を担う不愉快
ケン・ローチのパンフレットが
一枚めくれては不愉快
また一枚めくれては、

上面発酵する気体のさなかを
黄昏のクモ膜がゆらめくその下で
私という殻の裏側に密生した
白い
柔突起を焼き切るまでの
私の戦闘

眼下には
麦の穂を揺らすダッチオーブン、
蓋の上にまで置かれた
白化する炭。
計器にだけ目をやるようにして
そうして不愉快を飲み下したら
覗き込むあなたは真冬の兎の臭いがした。


自由詩 クモ膜下のプルツー Copyright シリ・カゲル 2011-11-06 22:30:02
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