少年の反駁
指の関節に力みが掛かる
苛々するとお腹が痛くなる
文句を垂れるより
先に舌が渇いてしまう
きっと僕の心は
ぶすぶすと焦げたニオイがする

　直立の犬
定義に拘る人がいる
立ち位置を固定すると
眼鏡に色が染みないらしい
無謬の存在を目指し
命名せよと世界に叫ぶ

　地球ゴーラウンド
適当に酔っていれば
地球は回るらしい
グルグル　グルグル
なあ君は
目を回しているだけだろう

　笑う門
嘘吐きはちょっと笑うのだ
大袈裟に笑わないよう
無表情にならないよう
認めれば何かくれる気で
痛みを幾らか和らげる気で
とても利己的に笑うのだ
武器を捨てることによって
戦いの意思表示をしている
殺されるつもりがないのだから

　定規
我が物顔で幸せを語る人がいる
他方つまんねーとぼやく彼は
何やら嬉しそうである
欲しいものを想像してみる
一日妄想して過ごせば
存外大したものでないらしい
通帳に並ぶ数字と云うより
言わば毎日清算しているのだ
主張は不足を予感させるばかりだ