忘れない
かぐら

通り過ぎてゆく笑い声
背筋をノックする人差し指
忘れない

ドレスのチャックを上げてくれたこと
わたしに腰をふらせたこと
忘れない

隠れ場所のなかったこと
なんて答えていいか
分からなかったこと
忘れない

名前も持たず
赤ちゃんが生まれたのに
きみはずっと雪のように
落ち着いていた
忘れない

灯りが点くと
人の目は赤い
毎晩
毎晩
手首が痩せていった
忘れない

世界の中に
わたしは居ない
心の中に世界を入れたから
この秋の雨の止まないこと
忘れない

次という字に草冠を乗せなさい
神の子にそうしたように
あの丘へ行くのもいい
怖くなったら帰ればいい
忘れないなら

そして永遠はない
でもまた
できたらいい



自由詩 忘れない Copyright かぐら 2011-11-02 23:20:51
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