かぞえる
つむ

かぞえる
今コーヒーカップに落とす角砂糖を
喫茶店のドアで涼やかに鳴ったベルの音(ね)を
雨上がりの街角で曲がった回数を
巻き戻して
振り返って

かぞえる
音がとぶまでCDを回した数を
雨音の中 ぼんやり撫でた猫の背を
クッションを投げ出して背伸びした回数を
思い出して
繰り返して

かぞえる
放課後の教室にさしこんだ夕陽
顔を見合わせて笑いあった数を
傘をすてて遊んだ雨の日を
たぐりよせて
なぞって

かぞえる
草むらでしのびよった蝶々の翅
野良犬につけた名前を
秘密基地に埋めた箱の色を
掘り起こして
ひろげて

かぞえる
あなたの微笑み
交わしたおはようの数
窓からさしこむ光
両腕を広げて
抱きしめて

かぞえる
心に折りたたまれた全て
手に入れたもの なくしたもの
今もっているもの
見つけて
とり出して

かぞえる
これからなくすもの
待ちうける悲しみ
眠っている深い恐れ
まっすぐに立って
毅然と見つめて

かぞえる
打ち寄せる波が
あたえてゆくもの
奪ってゆくもの
それでも
微笑んで。


自由詩 かぞえる Copyright つむ 2011-11-01 22:55:46
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