月夜のカレー
かなりや

すきま風に吹かれたような
元栓を閉め忘れたような
福神漬けがないのにカレーを作ってしまったときのような
元から1人なのに、1/2人になってしまったような

月はほんとうにきれいか
花はほんとうにかぐわしいか

私には確かめるてだてがない
いつも2人でやっていたのだから
そういうことを思い出す夜に限って
月がきれいだと隣人が騒ぐのだから

肝心なときには思い出すこともない

夏の間に建て付けを直そうと思い出せず
家にいるときは元栓の存在を忘れ
スーパーで福神漬けが目に入らない
すばらしい月夜には暗い家の中で君だけ見ていたりした

そんなことを思い出す夜に限って
月がきれいだと隣人が騒ぐのだから
じぶんの一部をどこかに落っことした気がして
妙にお腹が空く

そんなことを思い出す夜に限って
福神漬けのないカレーを食べて
まったく満たされない
これを、最低4回はくりかえすことにしている


自由詩 月夜のカレー Copyright かなりや 2011-11-01 21:10:30
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