未完成品の断片羅列01
ballad

仮題 群島収容所

このしまでうまれるはずだった
ものがたりがふねにのって
とびたつこともなく
おいだされていくひに
わたしの母はまたあたらしいこどもをうんだ
このしまでうたわれたうたのおおくが
さいごまでうたわれることなく
ずっとははのあたらしいこどもの
そばでまわっている

この、し、までうまれるはずだった
かきちらされたおおくのことばを
とどめるためにたてられたこの群島
そして収容所、
入り江に打ち寄せる瓶を拾い上げる
子供達の手に傷がある
あの子が傷に引き裂かれた日、
祝われた思い出が私の傷をまた増やし
島は雨季に入る

仮題 雨季

鎖骨から流れ出るように、
溢れて、
降った雨の中を、
手を振りながら、
追いかけない
レインコートの
中で、私たちが
始めた物語が、
生まれるはずだった、

皿に私が最初に、降り、
次に、貴方が、
それを

仮題 雨の名前

雨に、混ざる名前を、
一つ一つ、数え上げる、
声の中で、
粒の中に、
見える、あたらしい家族、
私の体は、
そこには入りきれない

手の上に、落ちて、
皮膚に、消えていく、
までの間に、
傘がさされない、

仮題 野焼き

あのビルの影には、
私の姉がいる、
ずっとそこで、
たっているのを、
私は毎日見る、
あのビルの陰には、
私の母がいる、
ずっとそこで、
たっているのを毎日見る、

ビルの影に、父がいるのを、
見た、父の背中に、乗っている
ものが、私を見て笑うのを、

仮題 時間の、

妹の、唇は、
女になった、
弟の腕は、
昨日、子供になった、
姉の足は、
母になった、
そして、テーブルに、
振られた、

仮題 瞳

やさしいあたたかい、
そしてつめたいこごえる、
かぜをきって、
はしる、あしに、
わたしは、おちる、
このはやさでは、
わたしは、ひとみのなかで、
なにもみない、

仮題

水の、悲惨な、
声がする、場所で、
午後は、時計を止めた、
僕の、知らない、
町の中で、

仮題

子宮に、溢れる、血の中で、
貴方は決して、叫ばなかった、

仮題

たましいの、
産卵する、季節、
私は、星、の、
下で、降るのをまつ、

仮題

娘の、名前を、
その小さな乳房に、
与える、
日に、父は、
雷雨の中、
息子の、背中に、
母を与える、

仮題

夜、
私の、足から、
先に、腕が生え、
手の中で、ならされる、
音が、心臓を抉る、
盗人は、私の顔を、
布でおおい、
祝福する、窓際に、
おかれた、花の、
名前を、聞く、
父の声に、
答えようとしない、

仮題

雨、雨、雨、
の、日に、
降る、降る、降る、
と、

仮題

手のなる方へ、鬼がよせられ、
私の場所があいた、
そこは、誰もがゆっくりと、
溶け出して、この空間に、
混ざる場所、

仮題

目を閉じることの、
やさしい恐怖が、

誰か完成よろしく


自由詩 未完成品の断片羅列01 Copyright ballad 2011-11-01 17:41:54
notebook Home