なほ子へ
モリー
あの軒先から香っている金木犀
もう暗い、足音一つの帰り道
そういえば一緒に歩いたっけ
「しばらく、もう会えてませんね。
目が二個と口がひとつあったことは覚えているけど」
手紙から日常を詮索し合うほど
お互い暇ではないし
電話をするほどのことでもない
曖昧に触れ合うことで心配をかけたくない
けれど
誰よりも私たちは友達ね
桜の散る頃
あなたの妹の葬式で
遺族として凛と振る舞うあなたと、
見つめ合い
一礼をしてその場を去った
言葉を介さずとも
それだけで良かった
この道をあなたと歩いたこと
私はきっと忘れない
暮れゆく秋
私たちの十八年間はそこらじゅうに溢れている