つむ

うすい埃を蛾のはばたきが払う
ちらちら光る暗がり
息をしている
なにか
(ここにある)
遠いいきもの。

箱を開けて
そこが空なら
びんの底に
わずかに残るソーダの輝く。

あおむけになる
おぼえたような呼吸
ほんの少し汗ばむ
床がつめたい

ガードレール
思い出のような酸化鉄
黄昏の鬼人
暗い蔵で泣く子を喰らい

目を閉じる
埃をかぶった昆虫図鑑
展翅された
幼い心

糸くずの足
硬いビイズの目玉
うすい、はね、
蜘蛛の糸を伝わる絶望を感じている

虫、
それから
蔵の床に横たわって動かない人間。

人にも虫にも一様に
誰が呼吸を教えたのか
(誰がわすれさせるのか?)


自由詩Copyright つむ 2011-10-30 17:50:28
notebook Home