好き、好き、好き、大ぁ〜い好きー2
草野大悟
私は、幼稚園の年中クラスの頃から、家の近くの新体操クラブ「NAKAMURA RG]に通っていた。全日本や世界選手権でメダルを取ったことのある中村良子先生が、私に付きっきりで指導してくれた。
長椅子に仰向けに寝て、練習生の一人が私の左足を押さえ、先生が右足を私の頭につくまで押し上げたり、大きく股を開かされる柔軟は、ちょっとばかりつらかったけれど、レオタードを着て化粧をし、試合に出ることが楽しくて仕方なかった。みんなが私を見ている。そう思うと、たまらなく心が躍った。
県の新体操大会で、私は一度も負けたことがなかった。表彰台の一番高いところは私のためにあるんだ、そう思っていた。
お絵かきや、ピアニカや、お遊戯や、そのほかの勉強でも私は一番だった。みんながまごまごそているのが理解できなかった。
「朱理ちゃんはすごいな。なんでもできるもんな。いつも一番だもんな。すごいな」
なにをならせても鈍くさい田中明が、鼻水をすすり上げながらいってくれるけれど、私はちっとも嬉しくはなかった。明なんかに誉められてもねぇ。でも、ま、遊んでやってもいいかな。
明の父親は、お寺の住職さんで、お爺ちゃんの命日には朝早くお経をあげに来て、ちょこちょこっとムニャムニャやって、母がいれたお茶を飲んで帰っていった。