レネゲイド
ホロウ・シカエルボク
赤い時間を舐めつくして
気がつけば愚鈍な夜だ
静脈に蓄積した日常が
腐った果汁飲料の様な
速度で管を滑りだす
時間差的な滑落の連続
連鎖
ひっくり返る組織と
消失する意識
ブラウンの床にひと粒のチェリー
モダンなムービーみたいで詩的
崩落した外壁の無残さを
愛しいと感じる瞬間だ
グラウンドのフェンスに絡みついて
そのまま枯れたツタのような血管だ
西の窓に突き刺さる陽射しの名前はさよなら
縁日の金魚が身体半分を腐らせて死ぬ
さよなら
くびり殺す幻想が
無人の部屋の埃みたいにうず高く積もる
夜明けを待ちながら思うことは
また夜が来るのだということ
ロッド・スチュアートのブーツ
けばけばしくって綺麗だった
ミック・ジャガーのステップと
J・ガイルズのピンボールみたいなロックンロール
水牛の寝言みたいな
ロン・ウッドの話声
気のない本をめくるみたいに
指先はキーボードを叩いて
でたらめに並べたフレーズを
いまの調和と呼ぶか粗雑な混沌と呼ぶか
固くなった皮を剥ぐような
時間差的で呆然とした
廃棄タイヤの焼けるにおいみたいなポエジー
もしくはポエット
フィラメントたるフィラメント
頸椎の天井に針の感触を落とす
水が垂れてくるみたいな音
浸食されたなにかが瞼を重くする
寝床にはいつも朝方
解体されたとりとめのない夢がばら撒かれる
ちょっとした郵便物を待っていたり
ちょっとした確認のメールを待っていたり
ちょっとした身体の痛みに顔をしかめたりして
横たわって捻ったり伸ばしたりしながら
温度が変わるのを待っている
時計の針を
上手く読もうと思ったことはない